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ではアトピーになる人とならない人がいるのはなぜでしょう?「体質」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、それを考える糸口を漢方は持っています。
先程の新陳代謝。新たに必要な物を取り入れ、不要になったものを排出していくことですが、「不要な物の排除」という点からすれば、この新陳代謝の能力がしっかりしているほどアトピーにはなりにくそうです。
もうひとつあります。それはアトピーを抑制する力です。
人にはおよそ「進める力」があれば「抑える力」が備わっています。そして往々にして、進み過ぎた時に抑える力が強く働くようになっています。もちろんその逆もあり、それでバランスが取れているのです。
例えば血圧。100メートル走をする時、体は興奮するようにいろいろな物質を作り出し、酸素や栄養を隅々まで届けられるように心臓を動かし、血圧はグンと上がります。(上がらなければいけません。)そしてゴールした時、「ハアハア」と懸命に呼吸して、足りなくなった酸素を補給し二酸化炭素を排出します。でもまだこの時には急に血圧は元には戻りません。しばらくして、体が興奮からさめて落ち着いてから自然に下がってきます。これからわかるように、通常必要に応じて進める力と抑える力が発揮されるようになっています。
そこで次にアトピーを抑制する力。
アトピーに多分に関与している免疫。この免疫というもの、もともと“疫病から免れる”ということなのですが、現代流にいうと“自分ではない物を追い出す”というのでしょうか。先程から出てくる「不要な物」に似ていますね。
でも考えてみると、例えば食べ物はすべて自分ではないですが、食べないと生きていけません。また妊娠しているお母さんのお腹の中に宿っている赤ちゃんは、お父さんとお母さんから受け継いだ体です。従ってお母さんの体とは違っているはずです。
そこで大切になるのが、「抑制する力」なのです。
幼少時にたくさんの食べ物に接して、「これは体に必要な物なんだよ」と言うことを体が理解するまで、この抑制する力が働いてくれるのです。そうでなければ、何でもかんでも口にするものすべてにアレルギー反応を起こしていると大変になってしまいます。また、お腹の赤ちゃんは大切な“命”で、守っていかなければならないことを体が理解して、免疫が働かないようにしているのです。
この力がかゆみを抑えるのです。つまり、「少し不要な物が入ってきただけではかゆみとして感知させない力」ということです。この力が強い人はアトピーにはなりにくいのかもしれません。もっとも、不要な物が溜まりやすい体質とも言えるかもしれませんが・・・
ただし、爆発的に出てくるアレルギー(アナフィラキシー)は、命にかかわりますので、現代では漢方の出番ではありません。
今までの説明を踏まえて、体が「不要な物」と判断したものが、皮膚に溜まるとかゆみを生みます。その不要な物の量は、体がうまく排除しきれない量であり、また発生するかゆみを抑制しきれないくらいの量と言えそうです。
そして一度強いかゆみが出てくると、本能的にかきむしってしまい、肌は壊れ、余計に不要な物が生じます。
そしてひどくなると、皮膚の新陳代謝が高まったとしても、修復や「不要な物」の除去には追い付かなくなり、悪循環を生じてしまいます。これがアトピー性皮膚炎の悪化と言えるのではないでしょうか。
次に「アトピーの多面的な対応」についてお話します。
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